"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
いつの間にか、どんどん話はすり変わっていっている。秋吾さんが来るまでに女子トークは続いて、二人で盛り上がっていた。

「随分と楽しそうですね」

私達に遅れること二十分、やっと辿り着いた秋吾さんは嫌味っぽく言った。何だか、顔も引きつっているし、どうしたのだろう?

「秋吾さんが来るまでに色んな話をしてました。だいぶ遅かったようですが、どうしたんですか?」

「景色を写真に収めていました。萌実さんと一緒に景色を楽しみながら歩きたかったのですが、そうは行かなかったので。旅館に着いたら見ましょう」

私が話しかけると、いつもの穏やかな秋吾さんに戻っていた。微笑みながら、私の話に答えてくれる。

「そうだったんですね。この周りの景色も素敵ですよね!」

改めて周りの景色を見渡すと、道路沿いに植えられた木々の新緑が、陽射しに照らされて輝いて見える。都会にはない、癒しの空間が沢山あるこの場所を選んで良かったなと思った。

三人揃ったところで、旅館の入口へと向かう。予約した旅館は老舗の高級旅館だが、老朽化によりつい最近、改装しリニューアルオープンした施設だ。旅館前の園庭も広く、隣接されたカフェではあんみつなどの甘味が楽しめるらしい。

旅館は写真で見たよりも大きく立派な建物で、和の風情が漂っている。

「お疲れ様でございました。樋口様はこちらのお部屋をご用意しております」
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