"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
チェックインを済ませると仲井さんに部屋を案内してもらう。奏さんとは一旦、ここでお別れした。

一通りの説明を受け、仲井さんが部屋から出た後に周りを見渡す。

「秋吾さん、貸し切り風呂からの眺めが良いですね」

「ここにして良かったですね」

旅館は高台にある為、下界の景色が良く見える。夜に園庭に出れば、星空も綺麗に見えるらしい。夜もこのまま晴れていたら、星が綺麗に見えるだろうな。

「萌実さん、後程、一緒に入りましょうね」

貸し切り風呂の洗い場から景色を眺めていると、秋吾さんが背後から抱きしめてきた。

「や、だ、ちょっと!」

秋吾さんは私の背後から、首筋に向かってキスを落としてくる。

「ど、どうしたんですか、一体?」

「ヤキモチです」

「ヤキモチって何ですか? 奏さんのこと? 奏さんは女性ですよ」

「……知ってますよ」

知ってるなら、何故ヤキモチを妬くの?

「今日は二人で過ごそうと決めたのですから、女性だろうと萌実さんに密着して良いわけがありません。部屋に訪ねてきても、絶対に入れないで下さいね」

「分かりましたから、今は離して……!」

まだ夜になっていないのに、秋吾さんの甘々スイッチが入ってしまったのだろうか? スイッチが入った秋吾さんは普段と違って積極的だから、私があわあわしている間に唇を奪ってきたりして油断も隙もない。
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