溺愛ハンティング
 いや、ネットで少し調べたから、彼がプロの植物収集家で、さまざまなオーダーを引き受けて日本全国、さらに世界中で活躍していることはわかった。

 とはいえ、お医者様や弁護士さんのように確固たるイメージは持てない。

 それでも八木さんはメディアにもずいぶん取り上げられているそうで、特に女性からの支持は絶大らしかった。

 それを裏づけるように、ツアーの参加者は私も含めて女性ばかり十名。
 中にはモデルかと思うくらいきれいな人もいて、みんなが彼に潤んだ瞳を向けている。

 月に二回開催されるこのツアー自体もすぐ満員になってしまうそうで、私が今日参加できたのはたまたま急なキャンセルが出たからだ。

 やたら熱気を感じるのは、会場が巨大な温室だからというだけではないはずだった。

「それではツアーを始める前に、お名前を確認させていただきますね。ここは広いから、たまに迷子になる方もいらっしゃるんです。では、元気にお返事お願いいたします。まず、あいりさん」
「はーい、あいりでーす!」
「いいお返事ありがとうございます。本日はどうぞよろしく」

 そつがなくて明るい進行に、あちこちで笑い声が上がる。

 参加者はひらがなで名前を書いたネームカードを首から下げていたが、五十音順で次々呼ばれていき、最後に私の番が来た。
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