因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「あっ、おばあちゃんちのお布団!」
驚いたように女の子が声をあげたのを聞き、思わず口元がほころぶ。
帰り支度が整い再び座席に腰を下ろした時には、女の子は自分の両手で文香を持ち、鼻に近づけてはニンマリ笑っていた。
「あの、ありがとうございます」
女の子の向こうで、母親が深々と頭を下げる。
「大したことはしておりません。文香は自分でも作れますので、今度はお嬢さんの好きな柄の折り紙で作ってあげるといいですよ。……では」
話しているうちに、新幹線は上野に到着する。座席から立って通路に出たその時、女の子がパッと顔を上げて言った。
「お兄さん、ありがとう! これ、大切にする!」
無邪気な笑顔に、こちらまで心がほころぶ。彼女の姿がどこか幼い和華にも重なり、胸にこみ上げる思いがあった。
――早く、和華に会いたい。
「どういたしまして」
小さく微笑んで、新幹線の出口へ向かう。あの母娘と会うことは二度となくても、香りが繋いでくれるこうした縁は、俺の心に一生残ることだろう。
俺はそんな出会いや人々の温かさを求め、これからも香道家として歩み続ける。
愛する、和華の隣で。