因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

「あまり和華さんがぼんやりしていると、他の女に先生を取られちゃうわよ? 先生を狙っている女性は、外にも家の中にもいるんだから」
「家の……中?」

 光圀さんが外でモテるのはなんとなく想像がつくが、家の中となると対象の女性がかなり限られる。

 というか、私以外の女性は家政婦だけじゃ……。

「あらごめん、口が滑ったみたい。今のは聞かなかったことにして?」

 私の怪訝そうな眼差しにハッとした柴田さんは、ごまかすようにそう言って、「ごちそうさま~」と席を立った。

 中途半端な情報だけ与えられて、かなりモヤモヤする。

 醍醐家の家政婦は五人。だいたい五十~六十代で、柴田さんのように子育てを終えた大先輩ばかりだ。未婚なのは、確か楓子さんだけ――。

 その可能性に思い至ると、ドクッと鼓動が跳ねた。

 もしもそうだとしたら、彼女が私を目の敵にする理由にも説明がついてしまう。

 でも、光圀さんと楓子さんは年が離れているし、まさか……ね。

 気を取り直すように、ごましおのかかったお弁当のご飯を頬張る。

 よくよく噛んでごくん、と飲み込んだはずだけれど、胸の辺りにいつまでもなにかが詰まっているような気がして、心は晴れなかった。

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