君しかいない
「成瀬、帰ったら足湯を用意して」
「承知しました」

 車が玄関口に横付けされ、運転席から降り立った成瀬が外から後部扉を開けた。
 車内から差し出したわたしの手を取り降車をエスコートするこの男は、執事の成瀬優也。東堂商事の社員として採用されたのだが、新人研修中不運にも社長であるわたしの父に目をつけられ東堂家の執事として働くことになってしまった不憫な男で、東堂家に仕えて数年後の現在はわたしの執事として職務に就いている。
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