君しかいない
 成瀬に抱き上げられ、フワリと身体が宙に浮く。
 ベッドに身体が沈み、真上には成瀬がわたしを見下ろしている。

「待って成瀬。どうして成瀬が父からわたしを諦めるように言わるの? 成瀬が執事だから? 違うよね。だって成瀬は、わたしのことを主人として好きでいてくれるだけなんでしょ?」
「私は真尋様の結婚相手として旦那様に見込まれ東堂家へやって来ました。旦那様は真尋様が誰に想いを寄せているか、ご存知ないですから。真尋様の本心が知りたくて道辻様との縁談で試したようですが」
「成瀬がわたしの結婚、相手?」

 成瀬は世界各国でリゾート経営している「N&」の御曹司で、父が選んだ婚約者だったのだ。しかし成瀬は父からこの縁談を受ける際、条件を出したという。
 政略結婚ではなく、ひとりの女の子として成瀬に惹かれ好きになってくれたのなら………と、初めからわたしの気持ちを最優先してくれていたのだ。
 わたしには結婚相手だと敢えて告げず、執事として出逢うことを選び。常にわたしの傍で、あれこれ世話までやいてくれていたことになる。
< 51 / 53 >

この作品をシェア

pagetop