婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「うん。そうする」
分かってくれたようです。
それからは普通の歩行速度になったので、ホッとしました。
もしかしたら、以前、レイ様に注意されたことを思い出したのかもしれません。ちょっとした出来事もレイ様とつながっていて思い出してしまう。
恋しい気持ちと忘れなければと思う気持ちが綯い交ぜになって、どうしたらいいのかわからなくて……切なくて、苦しくて。
小さな手に引かれて、導かれるように廊下を進んでいきました。
♢♢♢♢♢♢
「どうぞ」
いきなり扉が開きました。
考え事をしているうちに、西の宮に着いたようです。
開け放たれた扉から
「レイおにいちゃーん」
嬉しそうに駆け出していくリッキー様。
微笑ましい姿を目で追うと、その先にはレイ様がいました。