婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「うん。そうする」

 分かってくれたようです。
 それからは普通の歩行速度になったので、ホッとしました。

 もしかしたら、以前、レイ様に注意されたことを思い出したのかもしれません。ちょっとした出来事もレイ様とつながっていて思い出してしまう。

 恋しい気持ちと忘れなければと思う気持ちが綯い交ぜになって、どうしたらいいのかわからなくて……切なくて、苦しくて。
 小さな手に引かれて、導かれるように廊下を進んでいきました。



♢♢♢♢♢♢


「どうぞ」

 いきなり扉が開きました。

 考え事をしているうちに、西の宮に着いたようです。

 開け放たれた扉から

「レイおにいちゃーん」

 嬉しそうに駆け出していくリッキー様。

 微笑ましい姿を目で追うと、その先にはレイ様がいました。

< 425 / 835 >

この作品をシェア

pagetop