婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「知ってるかしら? フローラちゃんを襲った盗賊達は彼女を娼館に売るつもりだったのですって。メイドからは誘拐したら好きにしていいと言われていたそうよ。貴族令嬢だから高く売れるだろうとふんでいた。すぐに捕まって未遂に終わったけれどもね」
「い、痛い」
「あら、ごめんなさい」
顎に当てていた扇子がいつの間にか喉に食い込んでいたようで、アンジェラは扇子を外した。
「大事な商品。傷をつけてはいけないわね。大丈夫かしら?」
ちっとも心配しているようには見えないけれど、アンジェラはビビアン様の顎に目をやった。少し赤くなっているようだけれど、数時間もすれば消えるでしょう。
痛みを感じるのか喉をさするビビアン様に冷淡な眼差しを向けるアンジェラを見て苦笑する。
「レイニーとの恋愛は体験させてあげられないけれど」
わざとそこで区切るなんて、もう、これは面白がっているのではないの?
レイニーの名前が出るたびに動揺するビビアン様を見て愉しんでいるようにしか見えない。