Purity ~君を救える術があれば~
 時間も時間なので、電車は空いている。何度も乗り継いで目的地へ向かう途中で、時折、純ちゃんは僕にもたれて船を漕ぐ。
 純ちゃんがこれほど安心してくれていることに、僕には満たされた気分になる。
 東京を遠く離れ、かなり北上し、ようやく次は、目的地付近の駅だ。
「純ちゃん、お疲れ様。次の駅で降りるよ」
 下車して少し歩くと、とても美しい海辺に着く。
 10年前に二人で出掛けた海とは違うけれど、幸い、あの日と同じくらい、空も海も澄みきったブルーだ。
「わぁ…綺麗」
「気に入ってくれた?」
「うん。心が洗われるような青さ。空と海の区別がつかない…」
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