囚われの令嬢と仮面の男
「ほら、心がスッキリするように……なんでもいいから話を聞かせてほしいなって。休養って言っても、あのふたりの侍女に見張られてる生活じゃあ、息も詰まるでしょう?」

「ええ、そうね。ありがとう、クリスティーナ」

 兄弟姉妹との心の交流に飢えていたからかもしれない。私は妹の手を取り、「嬉しいわ」と口にした。

「じゃあ三時にお部屋へ行くから」

 そう言い残すと妹は手を上げ、自室へと戻って行った。

 アレックスやクリスティーナと姉弟らしい関係を築けるのが嬉しかった。ふふ、と目を細め、自然と口元が緩む。

 地下では今もエイブラムが苦しんでいるというのに……。

 途端、ハッと息を飲み込んだ。内面の私が低い声で囁き、暗い現状に気づかされる。胸が圧迫されるように苦しくなった。

 今は何時かしら?

 ノックしてから弟の部屋に入ると、入れ違いに侍従のヴァージルが退室した。彼に時刻を尋ねると、もうそろそろ十時半になるとのことだ。侍女たちが出て行ってから既に一時間以上が経過している。

「クリス姉さん、なんだったんですか?」
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