囚われの令嬢と仮面の男
今朝九時ごろに見送った侍女、メアリーとスーザンだ。今ごろは鉄道を降りて薔薇園に向かっているはずなのに、どうしてもう帰宅しているのか。理由を知りたかった。
画廊の中ほどで侍女たちと顔を合わせた。ふたりとも手ぶらで、薔薇など一輪も持っていない。
「ただいま戻りました、マリーンお嬢様」
侍女たちは型通りの挨拶をし、私から弟へ視線を移した。「アレックス様とご一緒でしたか」と続け、微笑を浮かべている。
「あなたたち。薔薇はどうしたの?」
「もちろん手配済みでございます」
「……え?」
目で疑問を訴えると、メアリーが嬉しそうな表情で「実はですね」と事情を話し始めた。
「駅へと向かう前に、商店が並ぶ通りへ立ち寄ったんです。そこの花屋に薔薇の注文をしたところ、ちょうど百本を超える薔薇を仕入れたところだと言われました。ラッキーでした」
「なのでご用命いただきました百本の薔薇は、午後にでも屋敷に届きます。なんの心配もございません」
「……そんな」
落胆する気持ちがうっかり声に現れた。肩から力が抜けて足元を見つめた。
「いかがなさいましたか、お嬢様?」
画廊の中ほどで侍女たちと顔を合わせた。ふたりとも手ぶらで、薔薇など一輪も持っていない。
「ただいま戻りました、マリーンお嬢様」
侍女たちは型通りの挨拶をし、私から弟へ視線を移した。「アレックス様とご一緒でしたか」と続け、微笑を浮かべている。
「あなたたち。薔薇はどうしたの?」
「もちろん手配済みでございます」
「……え?」
目で疑問を訴えると、メアリーが嬉しそうな表情で「実はですね」と事情を話し始めた。
「駅へと向かう前に、商店が並ぶ通りへ立ち寄ったんです。そこの花屋に薔薇の注文をしたところ、ちょうど百本を超える薔薇を仕入れたところだと言われました。ラッキーでした」
「なのでご用命いただきました百本の薔薇は、午後にでも屋敷に届きます。なんの心配もございません」
「……そんな」
落胆する気持ちがうっかり声に現れた。肩から力が抜けて足元を見つめた。
「いかがなさいましたか、お嬢様?」