囚われの令嬢と仮面の男
「まさか……薔薇はなにかの口実だったわけではございませんよね?」
懐疑的な物言いを聞き、ギクリとなった。心がどよめいたのを誤魔化すように首を振って否定した。
「っそ、そんなわけないじゃない。早急に対処してもらえて嬉しいわ。ありがとう」
心にもない感謝を述べると、侍女たちはその身に安堵を表した。
隣りに立つアレックスが"どうするの"と目で訴えてくる。弟の腕に手を添えて、何事もなかったかのようにその場でくるりと踵を返した。離れた侍女たちに聞こえないよう、囁き声でひと息に告げた。
「ヴァージルが用意したシャベルは部屋に置いておいて。今夜、取りに行くから」
皆が寝静まったあとに花壇を掘るわ、と目だけで意思を伝えると、アレックスは硬い表情でコクリと頷いた。
「アレックス様とどこかへ行かれるところでしたか? だったら私たちも同行いたします」
「いいえ、必要ないわ。もう部屋へ戻るところだから」
「左様でございますか」
裏庭へ現れるはずの侍従を迎えるため、アレックスが玄関に向かって歩き出す。
「じゃあ、またね。姉さん」
「ええ、ありがとう。アレックス」
懐疑的な物言いを聞き、ギクリとなった。心がどよめいたのを誤魔化すように首を振って否定した。
「っそ、そんなわけないじゃない。早急に対処してもらえて嬉しいわ。ありがとう」
心にもない感謝を述べると、侍女たちはその身に安堵を表した。
隣りに立つアレックスが"どうするの"と目で訴えてくる。弟の腕に手を添えて、何事もなかったかのようにその場でくるりと踵を返した。離れた侍女たちに聞こえないよう、囁き声でひと息に告げた。
「ヴァージルが用意したシャベルは部屋に置いておいて。今夜、取りに行くから」
皆が寝静まったあとに花壇を掘るわ、と目だけで意思を伝えると、アレックスは硬い表情でコクリと頷いた。
「アレックス様とどこかへ行かれるところでしたか? だったら私たちも同行いたします」
「いいえ、必要ないわ。もう部屋へ戻るところだから」
「左様でございますか」
裏庭へ現れるはずの侍従を迎えるため、アレックスが玄関に向かって歩き出す。
「じゃあ、またね。姉さん」
「ええ、ありがとう。アレックス」