Candy Spoon
1杯目

すっかり暗くなった夜の街を一人で歩く金曜日。
明日は仕事が休みだから、気持ちが軽い。
金曜日のせいか、街の中を歩く人たちも楽しそう。この賑やかな雰囲気が好き。



キラキラした街並みを眺めていると突然、頭にふわっとした感触。
なんだろ、と不思議に思うと、ふと何かが頭から落ちた気がして下を見た。



「ポ…ポタ〜〜……」



足元には、手のひらほどの大きさのぬいぐるみみたいな生き物が落ちていた。
まんまるな顔に少し尖った唇。目はまん丸で愛嬌がある。腕は羽になっているようだ。それが今、私の前で目を回して喋っている。
普通に考えるとあり得ない。

私、疲れてるのかな。今日も忙しかったし…なんて考えていると、そのぬいぐるみのような物は私に突然話しかけてきた。



「葵くんが見つからないポタ〜…ボクちん、もう疲れて飛べないポタ〜……助けてほしいポタ…」



えーん、と泣きながら、満月のような形をした目からは大粒の涙が出ている。
喋るぬいぐるみだと思っていたけど、生き物なのかもしれない。
ボクちん…ってことは男の子なのかな。



戸惑いながらも、泣いている姿を見ていると心が痛む。
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