桜が咲く前に
二ヶ月前。
「え、告白したいの?されたいんじゃなくて?」
「したい!」
放課後、部活に入っていない私は、同じく無所属の白崎 美奈子(しらさき みなこ)とおしゃべり中。
千紘先輩が好きだって唯一知っている、一番仲の良い友人。
ずっと告白待ちだと思ってた、と余りにも目をまんまるにして驚くから、くすりと笑いが零れた。
私の周りは“したい側”よりも“されたい側”のほうが多いだろうし、なんとなく憧れるのもわかる。
私だって恋を知らなかった頃は“されたい側”にいた。
…だけど、千紘先輩だけは違うの。
「お返しをね、したくて」
出会った春の日からほとんど千紘先輩が隣にいてくれた。
駅までの帰り道も、何気ない休日も、約束していなかったはずのクリスマスも。
そんな彼は、人気者で、誰からも好かれる人。
誘われているのをよく見るけれど、それを断ったと思えば私との予定の為だったり。
いつも優しくないのに、ふとした時に不器用な優しさを見せたり。