桜が咲く前に
相思相愛、なんだと思う。
好きって伝えたら嘘なく笑ってくれる。夜寝る時に、思い出して嬉しくなったりするのかな。
…それがたとえ恋と呼べる気持ちではなくとも。
私の千紘先輩への想いが恋だっただけ。先輩としての好き、じゃ足りなくなったから。
じゃあ千紘先輩は私にどんな気持ちを向けてくれるのかな。
「毎日会えるのが幸せで、楽しくて。
…これくらい私の中に千紘先輩がいるんだよって、100%伝わる手段にしたい」
もうすぐ春になる。
一番の願いは、変わらず先輩の傍にいられることだけれど、想いの量が釣り合わなければ私は離れないといけない。
…嫌だ。
もしも恋じゃなければ、卒業しても今のままの関係でいられたのかもしれない。
膝の上で、跡が残りそうなほど手のひらを握る。怖いからって逃げてしまいそうな私を離さないように。
「ううむ、む、む……
そっか、妃依が決めたことなら応援する!」
「…うむむ?って、どうしたの?」
「呼吸」
「独特…」
ミナちゃんのへんてこな応援で背中を押されて、私はやっとスタートラインに立てたと思ったのだけれど。