桜が咲く前に



友達かは微妙だけれど、バイト仲間よりも一歩近づけた気がするから。





本当に嬉しかった。





花ちゃんのことが好きってことも、とっても嬉しい。二人が幸せになってくれたらいいなって思う。





そんな気持ちで答えてから数秒、暗闇に慣れてきた目で千紘先輩を見上げると、苦しそうに顔を歪ませていた。





「せ、先輩?具合良くないですか?」




「…俺の今日の悪かったことは、妃依に友達ができたこと」





独り言みたいに呟く先輩の目の色は明らかに嫉妬が混じっていた。





ガタン、と私が後ろの靴棚に当たった音と共に千紘先輩の腕が背中にまわる。





隙間ができないくらい強く引き寄せるから、「うぐ…」なんて可愛くない声が出てしまう。





何も言わない千紘先輩の背中に腕をまわす。





居心地が良くてあったかくて…心臓の音が早かった。


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