★.:* ◌𓐍𓈒 LAST シンデレラ 𓈒𓐍◌ *:.★~挙式前夜に運命の出逢い~
標高333Mの天守閣の端で一人寂しく南方に拡がるキラキラ眩い夜景を見下ろしていると、胸に秘めた悲しみが次々に溢れ出してきた。

シンデレラストーリーなんて幻想と誰よりわかっているけれど、もしも一つだけ願いが叶うのなら……どうか私をラストシンデレラにして下さい。

泣きながら淡い星に願いを放った。

……私は、明日会った事もない人と結婚する。

まだ完全に受け入れられない現実を、大好きなこの場所で静かに受け入れられたら……。

一人静かに涙する私に気付いた右側の若いカップルが、少し離れた所で『失恋?』『 痛ーい』と口にした時、長身の男性が痛い女から1M程離れて立ち止まり二人の視線を塞いだ。

ホッとした直後、若い二人が逃げるような気配にふと視線を向けると、男性は私に背を向け両腕を組みプチ溜息を漏らした。

……もしかして盾になってくれた?

おぼろげにその背中を見ていると(うかが)う様にゆっくり振り返り、目が合うと気まずそうに無言で離れた。

そして手摺の一番右端で何もなかったように夜景を見つめる姿につい笑みをこぼすと、チラ見した彼も恥ずかしげに笑った。

……こんなに品良く洗練された雰囲気の大人の男性初めて。

四十代前半くらい?

スラり長身、おでこを全開にして前髪をかき上げながら横に流した色気抜群な短い黒髪ヘアがとても似合う。

高級そうなジャケットに身を包んだ爽やかイケメンで、目尻に皺が寄る柔らかな笑みに最高に癒され見惚れる。
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