婚約者の執愛
「あ…えーと……」

「浪野さん。
言いましたよね?
舞凛様に関わらないでほしいと……!」

「違うんです!
宗形さんの、フィアンセにお願いしてくれないかなって……」
「え?」
「就職……私、切羽詰まってて……」

「え?でも、もう内定はもらってたはずじゃ……」
「それは━━━━」

「申し訳ありませんが!!」
山野が浪野の手を掴み、舞凛から離す。

そしてそのまま、浪野の手を握りしめた。
「や!痛い!!」

「何度言えばわかるんですか!!?
舞凛様に関わらないでください!!しかも、触れるなんてもっての他です!!」
「やめて!!離して!!」

「山野さん!浪野さんを離してください!!」
舞凛が山野を、浪野から離そうとする。
そして、浪野の手を離した山野。

「いいですか?これは、最後の警告です。
もう二度と、舞凛様に関わらないでください」
そう言って、舞凛の手を引き大学を出ていったのだった。

「あ、あの…山野さ━━━━━」
「舞凛様!」
「え?」

「貴女はまだ、律希様の本当の恐ろしさを知らない」

「山野…さん…?」

「舞凛様にも、警告しておきます。
何があっても、誰とも関わらないでください」

「でも━━━━」
「人……消えていきますよ」

「え……それ、律希様も言って……」
「とにかく、今日ことは律希様に言いません。
でも、今日“だけ”です。
次はありませんので………」

山野の切ない視線に、舞凛は頷くしかなかった。


「━━━━━律希様」
「ん?なぁに?」
その日の夕食後、舞凛は膝枕している律希の頭を撫でながら声をかけた。

最近の夕食後の二人のスタイルだ。
膝枕をして頭を撫でると、律希はとても幸せそうに微笑む。

この可愛らしい律希の中に“悪魔”がいる。


“律希様の本当の恐ろしさを知らない”


「律希様、前に言ってましたよね?
“人が消えていく”って」
「あー、うん」
「あれって、どうゆう意味ですか?」

「………」
ゆっくり起き上がった律希。

「律希様、どうし━━━━」
そして舞凛の首に手をかけた。

「舞凛の首、綺麗だよね……
細くて、すべすべしてて……」
「律希様?」

「……………考えない方がいいよ。
僕は、舞凛を幸せにしたい。
大切に囲って、全てのことから守りたいんだ。
だから、何も考えなくていいよ。
僕のこと以外、何も………」

そして舞凛の頬を包み、口唇を重ねた。
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