赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「は、ぁ……っ」

私の舌先を軽く吸った匡さんが、ゆっくりと離れる。

まだ背伸びしたらすぐにキスできてしまいそうな距離から「俺の言うことが聞けるな?」と問われ、しばらく考えた後、眉を寄せ目を伏せた。

「……こういうのは、ズルいです」

普通に話し合いの末だったら、頷いていたかもしれない。

でも、最後の問いで、誤魔化すためのキスだったということがわかり、私だけがドキドキしていたんだと思い知らされたら、素直には頷けなかった。

ベッドの上でじゃないキスが、体の関係には繋がらないキスが、嬉しかったのに。
これでは、新婚旅行からの帰りの飛行機でのキスと一緒だ。匡さんにとっては、こんなにドキドキするキスも、私を黙らせるためでしかないのだ。

少しだけ勇気を出してじっと見上げる。
反発するのが珍しかったからか、匡さんは少し驚いたような顔をしてからふっと笑った。

……笑った。
え、笑った?

どうしてだろうと、色惚けしている頭をフル回転させて理由を探し始めた私に、匡さんはまだ笑みの残る顔で小さく息をついた。

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