赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「ねぇ。匡さんが結婚の話を持ってきたのって、私が高校二年生の秋頃だったよね。お母さんはどうして受け入れたの?」

母は、私の前にユニフォームを置きながら笑った。

「だって美織、匡くんにベタ惚れだったじゃない。それに、結婚の話が出たときには美織にもきちんと聞いたでしょう?」
「それはそうだけど……別に責任の話をしてるわけじゃなくて、普通だったらそんな早い時期の申し入れなんて即決しないんじゃないかなって不思議に思っただけ」

いくら私が頷いたとしても、まだ高校二年生だ。
心変わりすることだって十分ありえる。

でも母にはそんな心配はなかったらしい。

「そう? お母さんは迷わなかったけどなぁ。体を張ってまで美織を守ってくれたっていうのもあるけど、美織の隣にいるのが本当にしっくりくるのよ。匡くん以上の人はこの先現れないって、直感で思ったっていうのが正しいのかもしれない。匡くんなら美織を幸せにしてくれるって思ったの」

ニッコリとした笑みで言われ、唇を引き結んだ。
似たようなことを言われた経験は今までにもある。

『美織様があまりに他の男性と親しくされていると、匡様が気を悪くされます』
『美織さんのことは本当に大事にされていますよ』

滝さんも、沢井さんも、そして母も揃って匡さんは私を大事にしていると言う。

私だけなのだろうか。
その想いに気付けていなかったのは。

私だけがずっと……。

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