赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「あのとき、匡さんが叔父さんの家に来たのは偶然じゃなかったんだよね」
「匡くんは、美織の様子がおかしいって気付いてたみたい。だからあの日、叔父さんの家で何が起こっているのかを確認するために出向いてくれた。それからも、雅弘に掛け合って、私が仕事でいない時間は信用のおけるお手伝いさんを手配してくれたし、夜間働けなくなったお母さんに、すぐに個人病院の働き口を見つけてきてくれた」

母は、ひとつ息を吐いてから「本当に頭が上がらないわ」と力なく笑ってから、テーブルの上に置いてあるフェルトのユニフォームを手に取った。

「これは、事件の直後、美織が家庭科の授業で作ってきたのよね。匡くん、中学ではバスケしてたから、そのユニフォームとバスケットボールのつもりで作ったって、当時の美織が言ってたわ」
「うん……。なんとなく覚えてる」

このユニフォームを見た瞬間から浮かび上がってきていた記憶がはっきりと明確になる。

これは私が作って匡さんに渡したものだ。
当時匡さんが入っていたバスケ部のユニフォームの色を真似て作り、そして、助けてくれたお礼にと渡した。

この前、相葉くんから仕事をもらいポスティングしていたとき、私の腕を掴み話しかけてきたのは叔父さんだ。

だから匡さんはあんな強引に連れ戻したのだろう。
外出禁止も、もしかしたら叔父さんと関係があったのかもしれない。

でも、匡さんはなにも話してくれないから実際のところはわからないけれど。



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