赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
時計は十六時前を指している。
話を済ませて帰宅してもそこまで遅い時間にはならないし、美織がここでも落ち着けるようなら宿泊してもどちらでもいいと考えていた。
美織は、普段の性格と同じようにベッドの上でも積極性があり、それはたまにこちらが驚くほどにも関わらず、ただのキスでも未だに恥じらいを見せるときもある。
そういった部分に魅了されっぱなしだとは決して口には出さないけれど、気に入っているのは確かだった。
グレーの絨毯にダブルサイズのベッドが二台並ぶ部屋は至って普通の造りだが、美織は気に入ったようで目を輝かせていた。
それを見て、欧風をイメージした壁紙や寝具の色合いが、そういえば女性人気を意識したものだったと思い出す。
間もなくして運ばれてきたアフタヌーンティーのセットは、美織のためにフロントでオーダーしたものだ。
大きな窓際にあるテーブルのそばまで運んだボーイが部屋を出て行くのを確認してから椅子に腰を下ろすと、美織も遠慮がちに向かいの椅子に座った。
「好きに食べろ」
「はい。……あとでいただきます」
「そうか」
昔だったら真っ先に手を伸ばしていたのに、と少しおかしくなりながら十秒ほどかけ頭の中を整理し、「まず、自分の話をするが」と口火を切った。