赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「ああ。今日の午前中に帰国したらしい。もともと語学や歴史を学ぶためではなく、ただの気まぐれで行っていたようなものだ。あの調子だともう戻らないだろうな。ああ見えて偏差値は低くないから、融通の利く私立を選んで編入手続きをとるつもりだろう」

海外留学するくらいなのだから、当然英語はできるし、匡さんの言うように頭はいいのだろう。

見た目もお人形みたいだし、〝ご令嬢〟という単語がぴったりだ。

でも、あの様子だともしも結婚式に出席していたら大変なことになっただろうな……と苦笑いを浮かべながら二枚目のフィアンティーヌを食べていると、匡さんが小さくため息を落とした。

「常時反抗期みたいな性格は昔からだ。誰が相手でも喧嘩腰の態度しかとれないという習性があると俺ももうまともに相手をすることは諦めている。麻里奈に何を言われても気にする必要はない」
「でも……あの、結婚の約束をしたって言ってましたよね。しかもだいぶ昔からずっと」

つまり、私と同じだ。匡さんはずいぶん前から麻里奈ちゃんと私、ふたりから求婚され続けていたということになる。

従妹とは言え、さすがにそれは聞き流してはいられないと思い口にしたけれど、匡さんは表情ひとつ変えることなく答えた。


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