赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「あれも麻里奈が勝手に言っているだけだ。抱え込んでいたおもちゃがひとつ横から奪われた気がして頭に血が上っているだけだろう。あの親子は騒げばどうにかなると思っている節がある。まともに付き合っても疲れるだけだ。気にしなくていい」

気にしなくていいと言われて、素直に頷けるような、そんな軽い想いだとは思えなかった。

麻里奈ちゃんのことを昔から知っているのは匡さんの方だし、私は今日が初対面で会話らしい会話もできていないのだから、どちらの意見が正しいのかは議論するまでもない。

匡さんがそう言うならそうなんだろうと片付けたいのに、麻里奈ちゃんの睨むような眼差しが忘れられず眉を寄せた。

「私には、頭に血が上っているだけには見えませんでした。麻里奈ちゃんは本気で匡さんが好きなんじゃないでしょうか」

匡さんが好きで好きで仕方なくて、だから、私と同じようにプロポーズし続けていたんじゃないだろうか。

麻里奈ちゃんと、想いを告げられなくなる前の自分の姿が重なり胸が痛くなる。

麻里奈ちゃんが私と同じように本気で好きだと伝えていたのなら、そしてそれを匡さんが真剣に取り合わず今日まできたのなら、それはあまりに悲しい。

思わず意見した私を見た匡さんはひとつ息をつくとコーヒーの入ったカップを口に運んだ。


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