ママの手料理 Ⅲ
しかも、その腰には銃と共に2つの水鉄砲が括り付けられていて、これから水遊びでもするつもりなのか。


(そんな装備じゃ危ないって…)


呆れて突っ込みたくなるけれど、大也の本当の強さを知っている私は、何も言わない代わりにそっと彼から目を逸らした。



「…怒りを力にして、心で闘うんだ。いいね?」


そんなホストの穴だらけの装備に気付いているのか否か、湊さんは真剣な声で意味深な台詞を吐き出し。


怪盗mirageは、揃って大きく頷いた。



「…ねえねえ、湊さんが最後に言ってた言葉ってどういう意味?」


再び車内に静寂が訪れ、聞こえてくる音は大也がグミを噛むくちゃくちゃという咀嚼音のみ。


その音に被せるように、彼の袖を引っ張って小声で尋ねた。


「ああ、あれはジェームズが渡米する直前に湊に言った言葉でさ。意味は良く知らないけど、闘って勝てばオールオッケー的な感じじゃない?」


大也の返答はあっけからんとしたものだったけれど、何となく理解は出来る。


ふーん、と、私は瞬きをしながら頷いた。



心で闘う、なんて、ジェームズさんの言葉選びは美しい。


その綺麗な言葉を胸に留めて闘っているのだから、どうりで怪盗mirageにファンが多くつくはずだ。
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