ママの手料理 Ⅲ
「こ、はくっ、!」


今までとは比にならない程の激しさで号泣し始めた伊織を見て、私はあたふたと動き回るばかり。


「んだよ、男なら泣くな。俺の命を助けたお前を認めねぇ程、俺の性根腐ってねーよ」


天邪鬼な警察官は、じっと伊織を見下ろしたまま片頬を引き上げた。


「ねえ、いい加減泣き止んだらどう?この僕が頼んだ金粉入りのパンケーキでも食べて落ち着いてよ」


それでも泣き続ける伊織の口に強制的にパンケーキを押し込んだのは、例のナルシスト男で。


「皆、どさくさに紛れて申し訳ないんだけど、僕も自分の家族の件について改めて謝罪した」


「止めて下さい湊さん、流石に聞き飽きました。全員無事だったんだから良いじゃないですか。過去の黒歴史は全て水に流しましょう」


「それ、単にお前が流したいだけだろ」


視界の隅でおずおずと挙手をして発言しかけた湊さんに対して、すかさず航海と銀ちゃんからブーイングが飛ぶ。




「ありがと、皆…」


口をもぐもぐさせながら彼らの掛け合いを見ていた伊織の顔が、ようやく明るくなった。




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