ママの手料理 Ⅲ






これでようやく、家族が全員揃ったんだ。



私の大好きな怪盗mirageがようやく1つになり、わちゃわちゃと笑顔で話しているのを見ているだけで胸が熱くなる。


その輪の中には伊織も混ざり、まだ赤みの残る目を細めて笑っていて。




やっぱり、私の家族は騒がしいのが一番似合うよ。




血の繋がりのない私達は脆くてちぎれそうな糸を必死に手繰り寄せ、一緒になって生きてきた。


だからこそこの想いは、愛情は、他人が持つものより遥かに大きくて頑丈なんだ。






「家族全員揃った事だし、早くパンケーキ食べよー!冷めちゃうよ!」


遠巻きに彼らを眺め、感慨深げになっている私を見つけた大也が微笑んで手招きをする。







「ほらね、俺を信じれば大丈夫だって言ったでしょう?」



大也が私に何度も言ってくれた“大丈夫”の言葉は、根拠がないのにいつだって私を前向きな気持ちにさせてくれた。


「何で、いつも大丈夫になるって信じてたの?」


自分のパンケーキの箱を開けながらわざとらしく尋ねると、既にふわふわなそれにナイフを投入していた彼は意味ありげな笑みを浮かべる。




「そんなの決まってるじゃん!どんな無理難題でも、俺達なら解決しちゃうんだよー!…だってさ、」



彼の目が流れる様に正面を向き、他愛もない話をして、時には肩をビシバシ叩きながら笑いあっている男達を捉える。



「だって俺達は、」











家族だから。
















【完結】




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