没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
現にヨデル伯爵の親類縁者はジェラールの恩情に感謝し、レオポルド派を抜けたという噂を聞いた。

「余計な心配に感謝します」

「殿下!」

文句を言いたそうな宰相を無視したジェラールは、会議室のドアを開けて入室する。

楕円のテーブルにはすでに十二人のメンバーが揃っていて、眉間に深い皺を刻んだジェラールに怯え、目を逸らしたり首をすくめたりした者がいた。

(しまった。委縮させては会議の意味がない)

この国は王権国家ではあるが、議会や裁判制度が整っていて法治国家でもある。

独裁は国を亡ぼすとジェラールは父に教えられて育った。

かみ砕けば広く皆の意見を聞けという意味で、会議では権力者に忖度のない意見を求めたい。

インペラ宰相への憤懣をグッと押し込めたジェラールは、笑みを作ると挨拶のために立ち上がろうとしている十二人にそのままでいいと手で示した。

「遅れてすまない。さあ始めよう」

オデットに会いたくて気が急いても、政務に手抜きはしない……これが自分自身への約束だ。



会議を終えたのは一時間後で、私室に戻ったジェラールは大急ぎで着替える。

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