もういちど恋われたい


 甘え、だったのかもしれない。

「別れてもいいよ」

 空気が悪くなるたび、脅しのように口にしてきた。

「私が気に入らないんだったら」

 彼の表情がゆがむのを見て、勝ったつもりになっていた。

「こんな時間のムダ使いするぐらいなら、さっさと別れて次いきたいし」

 いつだって折れるのは彼の方なんだから、最初からごちゃごちゃうるさいこと言わなきゃいいのに。私が好きなら丸ごと受け入れて、謝らないとか反省しないとか、そんなことで機嫌を悪くしないで欲しい……あの頃は本気でそう思っていたのだ。



 人の気持ちは変わる。

 愛情も変わる。

 満々と満たされていたものが減っていくなんて、考えたこともなかった。

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