ティアドール
「ふぅ〜」

大きく息を吐いた後、白衣の男は、培養液の中に漬かったコアを見ていた。

「霧島博士」

突然、後ろから声をかけられたが、霧島は驚くことなく振り返った。

「何かご用かね?バド博士」

霧島がいるところは、ひんやりした空間に、培養液に漬かったコア達が、無数に置かれた…特別ルームであり、関係者以外立ち入り禁止であった。

「霧島博士、おききになりましたか?6機目のオリジナルフィギュアは、人型だったらしいですよ」

にやにやと笑いながら、近付いてくるバドから、視線をコアに戻した霧島は、口の中で呟いた。

「やはり…」

「確か…レクイエムも人型でしたよね」

素早い動きで、霧島の横に立ったバド。

「…」

霧島は一度、口を紡ぐと、

「詳しくはわからん。レクイエムは、コーティングを解いたことがないからな」

コアから離れ、部屋内を歩き出した。

バドも、その後ろに続いた。

「そもそも、人型は…戦いには不向きなはず。他のオリジナルフィギュアは、ある種…人のような部分がありますが、彼らは体のつくりは、まったく違う」

後ろから話し続けるバドの言葉に、隣の部屋に移る為に、壁のパネルに指を押し付けた霧島は、左右に開く壁を見つめながらこたえた。

「人型の兵器など、つくる意味がないことは、今までの人類の歴史が物語っている。あんな二足歩行のバランスが悪いものをどうするかね。アニメや漫画の世界だけだ。上手くいっているのはね」

「しかし、現実的に、フィギュアという兵器の殆どは、人型ですよ」

バドも指を、壁につけられたパネルに押し付けた。

「それは、フィギュアが…」

「そうフィギュアが」

バドは、霧島の言葉を遮ると、口を閉じ、数秒後に開けた。

「まるで…霧島博士の言い方では、フィギュアは…兵器ではないような言い方ですね」

その言葉に、霧島は前を向きながら、目を細めた。

「おっと、失礼」

バドは突然足を速めると、霧島を追い抜き、頭を下げた。

「いろいろ話をしたいところですが、私にもお仕事がございます」




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