ティアドール
顔を上げた時には、笑顔を作っていた。

霧島は足を止め、軽く眉を寄せた。

「もう1つご報告が!我々の新型ノアですが、日本軍のブシを圧倒したようでございます。流石は、どちらも開発に関わっていらっしゃったことはありますね」

「フン。先に納品したのは、あくまでも試作機。今度の量産機は、性能も上がっておる。やつらの新型をも圧倒することになる」

霧島の自信に満ちた言葉に、バドは笑みを浮かべながら、一番言いたいことを口にした。

「その日本軍の新型さえも、圧倒したのが…フェーン少佐の乗るゴールデンバードこと明智」

「!?」

霧島は、目を見開いた。

「なぜ明智などという名前をつけたのかは、わかりませんが…」

話を続けようとするバドに、霧島はきっぱりと言い切った。

「あの機体のコアは、量産できない。あれだけだ」

「!?」

霧島の言葉に、少し驚いた後、バドは笑った。

「アハハハハ!わかっていますよ。霧島博士のお蔭で、我々はフィギュアを持つことができるようになりましたから!感謝してもしきれない!」

バドはそう言うと、もう一度深々と頭を下げてから、霧島に背を向けて歩き出した。

「…」

しばらく無言で、バドの後ろ姿を見送った後、霧島は手を伸ばし、真横にある扉を開いた。

そこは、霧島の研究室であった。

研究室の角に置かれた机の上には、写真立てがあった。

その中で、椅子に座ったお腹の大きなブロンドの女の人を真ん中にして、右に霧島…左に、同じくブロンドの老婆が立っていた。

「エレン…。ティアナ」

霧島は写真を見て、呟くように言った。

そこに映っているのは、霧島の妻と娘。

二人とも亡くなっていた。レクイエムが世界を崩壊した…数年後に。

そのことが原因となり、霧島は日本を捨て、テラになる前のアメリカに亡命したのである。

霧島は、涙が溢れそうになる目を閉じた。

すると、1つだけ置いてきた心残りが、よみがえってきた。

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