ティアドール
「か、勝手に、だ、脱出システムが作動したか?」

子宮の形をしたユーテラスが半分に割れると、河村は中から這い出た。

すると、中に詰まっていた液体は蒸発し、ユーテラスは消滅した。

「だが…よかったか」

河村は、その場から走り出した。

その後ろでは、頭がなくなっていた為、地面にオブジェのように首から立つガルの背中から、コアを抜き取り、食事を始めるアルテミスの姿があった。

「すべてが…予想以上だ」

河村は走りながら、耳につけた通信機をオンにした。

「作戦失敗!やつのパワーは、予想をこえてました!」

その報告に、通信機から有馬の声が聞こえてきた。

「こちらも、予定外よ。向こうの方が早く着きそうなの」

「な!」

河村は、走っている先に広がる海に目を細め、舌打ちした。

「チッ」

そして、踵を返すと、アルテミスの向こうにある基地に向かって方向を変えた。

「援軍が出ていない?何をもたついているんだ!」




「アルテミス…」

食事を終えたアルテミスは、顔を上げた。

コウの目に空が映り、次に海が広がった。

「海…」

コウはしばらく、海を見つめてしまった。

「行こう…」

呟くように言うと、アルテミスは海に向かって走り出した。

「コウ!」

基地から飛び出してきたアキラが、アルテミスの背中に叫んだが…機体は足を止めることはなかった。



その頃、基地内はパニックになっていた。

「オリジナルフィギュア!逃走!海に向かってます!」

オペレーターの報告に、司令は下唇を噛み締めた。

「フィギュアは出せんのか!」

「機体の整備が終わってません!」

「動けるなら、出せ!」

司令の怒声が響いた。

「司令!」

「どうした!」

司令は、叫んだオペレーターの方に顔を向けた。

「海上から、未確認の飛行物体が近付いて来ます!その数、三機!」

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