ティアドール
「舐めるな!」

すぐに立ち上がったアルテミスは、向かってくるガルに向かって、再び爪を横凪ぎに振るった。

「人型のフィギュア!それに、そこまで精巧ならば!」

河村は、急接近しながらガルに土を蹴らした。

「読むことができる」

機体が軋んだが、ガルはほぼ直角に曲がることができた。

コウの目には、ガルが消えたように見えたことであろう。

「再びバランスを崩し、羽交い締めにして連れていくしかないな」

至近距離から、ガルの頭部につけられたガトリング砲を連射した。

しかし、コーティングされたアルテミスの皮膚は、銃弾を跳ね返した。

「厄介だな」

河村は、機体を離すと、ビームマシンガンの銃口を向けた。

その時、アルテミスの回し蹴りが、ガルの頭部を吹き飛ばした。

「な!」

突然、視界が真っ暗になったが、すぐに補助モニターに切り替わった。

「化け物か!」

視界が戻った瞬間、アルテミスの拳が、ガルの胸から、背中を貫いていた。

「無様だが」

咄嗟に機体を下げたことによって、ユーテラスの損傷を免れたガルは、アルテミスの腕を取った。

「捕獲完了かな」

河村は少し引きつりながらもフッと笑い、基地へと回線を繋いだ。

「オリジナルフィギュアの動きを封じました!至急!増援を!」

基地から返答がくる前に、河村の視界が変わった。

「な!」

突然、目の前に地面が迫る。

「ば、馬鹿な!」

「うおおおっ!」

ガルに右腕を突き刺したまま、アルテミスはまるで球を投げるピッチャーのように、機体を投げたのだ。

腕を振り切る寸前、アルテミスは手刀をつり、ガルの胸から肩を切り裂いた。

「くっ!」

首から機体を地面に激突したガル。

その衝撃に、ガルの腹の辺りが開き、ユーテラスが飛び出した。

ユーテラスは、脱出ポットの役目を兼ねていた。
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