太陽のような君をもう一度
初めてちゃんと羽鳥日向と会話したのは二年生での初めての中間テストの後のこと。

全てのテストが返された日の放課後、彼は私に頭を下げた。



「広瀬、頼む!俺に勉強教えてくれ!」

「……え」



今まで話したこと、ないのに。

突然の出来事に驚いてポカンとする私と頭を下げ続ける羽鳥君。

その様子にまだ教室に残っている人たちから野次が飛ぶ。



「中間テストが悪かったからって広瀬さんに頼むなよ、日向」

「確かにあの点数はヤバいけど」

「えー、ていうか羽鳥の点数だったら私でも教えられるかも」

「おい、そこヤバいとか言うな!」



次々と声が周りから溢れてく。

すごいな、と素直に思った。

彼を中心にお話が進んでいく。

まるで本の中の主人公だった。



「広瀬さん、困ってるじゃん」

「え、あ……」



羽鳥君の友達からの言葉に肩が震える。

違う。ただ、なんて答えていいか分からないだけ。

それに私が人に勉強を教えるなんて……。



「その、羽鳥君は私じゃなくても……」



彼にはたくさん教えてくれる人がいるのに。

つい俯いてしまう。



「俺は広瀬がいいの!」



その明るくて自信に満ちあふれた声にばっと顔が上がる。

そこには太陽のような笑顔があった。



途端に心臓がバクバク動き出す。



「分かった」



気づいたら頷いていた。

そうすればまたあの笑顔がもう一度見れると思って。





いるだけで周りを照らす彼といつも勉強ばかりの私が交わった瞬間だった。





好きだと言われたのは二年の夏の終わり。

別れを告げられたのは三年の夏の始まりのこと。

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