春恋
軽くウエーブのかかった茶色の髪と趣味のサーフィンで焼けた肌。

「ありゃ、モテますよね〜」


神奈ちゃんは安西さん用のコーヒーをゆっくりドリップしながら窓際に座る彼にうっとり。


(若い子はあんな人が良いのね…)


チラッと彼を見ると目が合ってどちらかともなく会釈した。


「睦月さんが相手じゃ無理かぁ〜。前に聞かれたんですよ。睦月さんに彼氏居るのか?て」


ぷうッと頬を膨らませて藍色のコーヒーカップにゆっくりとコーヒーをそそいだ。


「んー、私は興味ないかな…。だって」


言いかけた言葉を飲み込んだ。


(だって、もうすぐ私は実家に帰るし。)


これが次に来る言葉だった。
この事はオーナーしか知らない。
雇い主に辞める事を言うのは当たり前。

大学を卒業してフラフラと30まで自由にしてた私にとうとう親がお見合いと言う手段を出してきた。

彼氏も居ないし別に構わない。
親が引いたレールに乗っかっても今までみたいに後悔はしないだろう。
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