ゆっくり、話そうか。
想像の中の日下部は、いつも冷静でなにかジョークを言われてもクスリともせず、ジョークに対する酷評をぶつけている。
とか、告白してきた女子にも「付き合わねぇし」と小学生でも変わらずやっていそう。

でも気を許した相手にだけ人懐こい。
これは自分の願望も入っているため、絶対に言わないけれど。

「あ、ごめん、なんか、いい想像できひんかったからコメントはさし控えるわ」

「酷いね」

「せやねん、酷いのしか思い浮かばんかってん」

「園村さんの想像は簡単につくよ」

ろくでもない予感しかしない。

「言わんでええから」

「男前見かけたら、男前男前って言って持ってるもの放り投げてたんでしょ?」

「言わんでえぇ言うたやん。なんでなん」

「あぁ、ごめんね」

悪びれもなく謝った日下部だが、やよいから返されたのは膨れっ面。

でもそういう君は本当に───
なんて───なんて───

喉の奥に引っ掛かるモヤモヤを、日下部は無理矢理引っ込めた。
やよいもまた、つい口にしてしまいそうになる自分の気持ちを心のずっと奥へ押し込んだ。

もう付き合わなくても、気持ちが届かなくてもいい。
こんなふうに日下部と、近いようで遠い距離でいいから、いつまでもずっと笑っていられるのなら…
この先も変わらず、それでもう、本当にいいと思った。

















< 113 / 210 >

この作品をシェア

pagetop