ゆっくり、話そうか。
けれど、素直に嬉しさが勝っていて、さっきはあれだけ嫌だ嫌だ言ったのに、今では楽しみで仕方なくなっていた。
早く土曜日がこないかなぁ、なんて。

「じゃあ帰ろっか」

気づけば教室にはこの四人しか残っていなくて、試験発表で部活は中止ともあり、声もざわつきも聞こえない。
荷物をもった四人は教室の外へ足を向けた。

「ぅあぁっ!」

突然声をあげたやよいにビクッと肩を揺らせた三人が振り返る。
そんなに大きな声を出したつもりは無いやよいも三人の反応に逆にビックリで、何故か「あぁっ」と小さく言い直した。

「なんで言い直したの…」

「や、なんとなく、ごめん」

日下部のツッコミにも小さな声を心がける。

「美術室に筆箱忘れて来てんのすっかり忘れてて」

「美術四限だったよね、そのあとどうしてたの?」

どういうこと?
理解できない。

信じられないとばかりに日下部の顔が歪む。

「ペンでノートとってた……あ、そんな目で見やんといて」

三人の視線が刺さる。
残念なものを見るような、尚太に至っては俺でもそんなことしねぇと言っているふうな、そんな冷ややかさ。
でもノートはちゃんととっていた。
勉強していたのだから、問題はない。
やよいは開き直って三人をガン見した。
やよいだって、行こうとは思っていたのだ。
ほんとに。

昼休憩に取りに行こうとした。
けれど万智と話し込んで楽しくてすっかり忘れていて、5限目終了時に取りに行こうと思っていのだが、これまた万智と話し込んで楽しくなって、六限が始まるまで筆箱の事など微塵も残っていなかった。
それを今思い出したのだ。

「雑だなぁ、やよいっち…」

そんなにきっちりした方でもない尚太に言われて、ナイフが刺さる。

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