ゆっくり、話そうか。
#3 雨は降っても地は固まらない
降水確率60パーセント。
曇りのち雨。

朝の微妙な天気予報を見たやよいが、パンパンに膨れたバックパックを背負って家を出る。
かんかんに晴れるのも困ったものだが、雨のなかでのキャンプとなると出来ることも限られてしまう。
キャンプファイヤに花火、肝試しや飯盒炊飯等に大きく影響を与える事になる。
楽しさ半減だ。

「全然眠れやんかった…」

若干厚い雲に覆われた空を見上げ、ひ弱に呟く。
昨日コピー室での一件が頭を離れず、眠ったり起きたりの繰り返しで体調が芳しくない。
ぐっすり眠って今日を全力で楽しむ予定がのっぱなから崩れてしまった。
もしかしたら今日の曇り空は、やよいとしては都合がよかったかもしれない。
寝不足でのキャンプはいくら若いとはいっても負担になるし、未だに感触の残る首筋が気になって太陽光線の相手などとても無理だろう。
昨日はあれから無言でホチキスを打ち込んだ。
幸い終了まで二人きりということはなく、職員会議を終えたすちゃらか担任が途中参戦した。

三人での作業もサクッと終わり、帰りも車で送ってくれたおかげで不自然に帰宅することも避けられた。
帰り道が同じなため一緒に帰る?となる流れではあるが、二人にそんな展開はまず無い。
となればお互いがお互いの存在を微妙に意識しながら距離を取り、どちらかがどちらかの歩幅を気にしてといった気まずさが予測される。
なのでラッキーだった。
助手席に乗った日下部とは顔を合わせずにすみ、やよいはただ窓の外を見てればよかったし、担任が無駄口を叩くタイプでもないので、車内は思いの外過ごしやすかった。

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