一夜限りと思ったワンコ系男子との正しい恋愛の始め方
 酔ってのやらかしを重ねてしまったことに、深く落ち込む。自分がひどく情けない存在に思えて、この場から早く立ち去りたかった。

「今、何時かな。すぐ帰るね」

 そういってベッドから降りようとすると、阻むように健斗がベッドに腰掛けた。そして美晴の握っていたコップをそっと取り上げる。

「今、夜中の十二時ちょい前です。今から駅行っても終電逃すだけなんで、このまま泊まって」
「でも」
「ここまでどうやって来たか、ちゃんと覚えている? バーベキュー会場出てから今に至るまでのこと、全部言える?」

 確認するように聞かれ、口ごもる。

「確かに、記憶はないけれど……」
「そんな人を一人で帰すわけにはいかないです」

 きっぱりと断言すると、健斗は美晴を覗き込み真っ直ぐに視線を合わせてきた。

「美晴さん、疲れたまっていたんじゃないかって陽平に言われた。俺、全然気付かなくって……。ここで休んでいってもらいたいんだ。俺が、心配だから」
「健斗」
「あ、もちろん、なにもしないんで!」

 後悔と不安と焦りに満ちた表情で、懇願する。まるでやらかしたのは自分の方だと言わんばかりの健斗の態度。そんな彼の胸に抱きつきたい衝動に駆られ、美晴は下唇を噛み締めそれを押し留めた。

「……体調管理も出来ないなんて、社会人失格だよね」
「十月入って環境が変わったんだから、仕方ないです。あと美晴さんのことだから、自分を紹介するにあたって神経使ったんじゃないかなって、理恵ちゃんが心配してました」
「そっか……」

 三人に気遣われている。そう思うとまた申し訳無さに落ち込んで来る。健斗はそんな美晴の些細な表情も見逃すまいと、ずっと目をそらさず見つめていた。

「今日はここに泊まってください」

 もう一度、健斗が繰り返す。声は静かに深く、美晴を帰す気はないことを示していた。決意の固さに圧され、美晴はしばらく無言で健斗を見つめ返すと、ゆっくり息を吐き出す。

「分かった。お邪魔します。本当にごめんなさい」
「俺が泊まって欲しい、」

 何度も繰り返そうとする健斗の主張を首を振って止めさせると、美晴はクスリと小さく笑った。

「ありがとう。お言葉に甘えて、泊まらせてもらう」

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