凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
 礼儀正しくて真面目なのに、ベッドでは艶やかになるギャップもいい。

 だから初めて抱いた日から、覚えたてのガキみたいに夢中になった。あまりがっつくと引かれるかなと思って躊躇したり、でも気持ちが止められなかったり。
 紗衣といると、自分はこんなにもカッコ悪いんだと自覚する。

 今まで俺の周りにいた女性はどちらかというと高圧的で、自信に満ち溢れたタイプ。そう、美咲のように。
 けれども紗衣はいつも自然体で、おばあちゃん思いで優しく、だが芯はしっかりしている。

 紗衣が笑うとき、悲しくて泣くときも、いつも一番そばにいるのが俺であればいいと切望して止まない。

 これってつまり、愛してるってことだよな。

「……美咲もそういう相手に出会えばわかるよ」
「なにその上からの発言! 惚気にしか聞こえなくてムカつくんだけど」

 美咲は本気で怒ったというよりは、惚気にうんざりしたのか深いため息を吐いた。

「ほんと悔しいわ。こないだの開院記念パーティーでしたみたいに、また今度紗衣さんに柊矢の悪口を吹き込んでおこっと」
「おい、なにしてんだよ。紗衣に余計なことすんな」

 俺が辟易とした声を出すと、美咲はしてやったりな顔で笑う。

「あ、そうそう。私と亮真との結婚がなくなっても、うちの大学病院は若月総合病院への医師派遣を打ち切ったりなんてしない安心して。次期医院長」
「そりゃ助かるよ。どこも医師不足だからな」
「柊矢が来年にはパパかぁ。おめでとう」

 ニッと口角を上げ、微笑んだ美咲に「ありがとう」いつになく素直な気持ちでそう伝えた。
< 102 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop