エリート警察官は彼女を逃がさない

「どうしてこんなことをしてくれるんですか?」
私を席に座らせると、征爾さん自らシャンパンを開け、グラスに注いでくれる。
恋人同士のデートのようで、大切な人に向けるような表情にみえて私は小さく呟いた。
本当は「私のことをどう思ってますか?」そう尋ねたいのをグッと耐える。
「ん? どうしてかな」
やはりうまくはぐらされてしまい、私はキュッと唇を噛んだ。
「嘘、ごめん」
「え?」
征爾さんはシャンパンのボトルをワインクーラーに戻すと、私の目の前に座った。
「初めて会った日から俺は美緒に惹かれてる。どうしようもなく」
まっすぐに目を見つめられ、そして紡がれた言葉に私は動きを止めた。
聞きたかったはずの言葉なのに、いざ言われればドキドキと心臓の音がうるさくて落ち着かない。
「でも……」
いきなりの否定の単語に、私はパッと顔をあげた。やはり何かを言われるのだろうか。
< 36 / 74 >

この作品をシェア

pagetop