あの夜を閉じ込めて
あの夜の続き



季節が変わり、五月になった。桜の開花宣言とともに、世間はお花見気分で、どこもかしこも春一色だ。

あれから私の環境も少しずつ変わり、小さなイベント会社の企画営業部に転職。それに伴って新しい住まいも決まった。

「あ、もしもし。お母さん? 電話くれた? うん、うん、今仕事が終わって帰ってるところだよ」

もちろん結婚がダメになったこともしっかり両親に話した。理由は……性格の不一致、ということにしてある。結婚がなくなったことを打ち明けたことで肩の荷は下りたけれど、それによってひとつだけ問題が増えた。

「だから、この前も言ったけど、お見合いはしないってば」

なぜか勝手に結婚相手を見つけてくることだ。

つい先日も自宅にお見合い写真が送られてきた。相手は一回り以上も年上の大学教授。結婚歴はなし。語学も堪能で趣味は海外旅行。一般男性より収入が高く、持ち家のマンションに住んでいる……という情報を母から矢継ぎ早に聞かされた。

写真を見る限り、とても真面目そうな男性だった。なんで今まで結婚しなかったんだろうと不思議に思うくらい素敵な人だったけれど、私の心は動かなかった。

「いつになるかわからないけど、ちゃんといい人ができたら報告するから。じゃあ、またね」

次のお見合いを勧められないうちに、母との電話を切った。

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