溺愛体質の先輩が甘くするのは私だけ。
「うううっ……どうしようっ……」

心臓、やっぱりうるさい……。


ドンッ

「きゃっ……!?」


夢中で走っていると、誰かにぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさっ……」

「……真白?」

「……へ?も、もしかして、蒼……?」


鷹司蒼(タカツカサアオイ)、幼稚園がおんなじだった幼なじみだ。


「その制服……!!もしかしておんなじ夜桜学園?」

「ああ。気づいてなかったのかよ」


クスクスと笑っている蒼。


「蒼、背伸びたね!」

「ああ。さすがに伸びるだろ」

「にしても高いよ!」

「はは、お前はチビになったな」

「あはははは……」


普通に蒼が大きくなっただけだと思うけど。


「蒼は何組?」

「2組だ」

「え、本当!?私も2組!!」

「知ってるけど」


あ、名簿見ればわかるもんね!

私ちゃんと見てなかったから……けど、莉奈ちゃんとおんなじことだけはわかる!


「いや〜よかった!蒼が一緒で」

「……俺も」

「ふふっ、じゃあこれからよろしくね!」

「ああ」


……その後、私は先輩のことなんて気にせずに学園に到着した。


……けれど……。


「あ……れ?」


ザワザワと騒いでいる教室。

それに、変装をしていない先輩。


「まーしろちゃん」


にこにこと私の方を見て、微笑んでいた。
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