仮面王子とのメモワール
「じゃあ、早川の席はあそこな。隣はー……、お、蓮見(はすみ)だな。よろしく」
「えっ」
担任のその言葉に、思わず声が出た。
周りの女子達が羨ましそうにこちらを見る。
……あぁ、そんな視線を浴びることすらなんだか懐かしい。
私の名前に反応したのか、教卓横に立つ彼がピクリと反応した。
やめて。こっちを見ないで。
そう願うはずなのに、どこかで逆のことを考えてしまう自分もいる。
ゆっくりとこちらを見た彼の瞳に、私が映った。
その瞬間、彼は丁寧すぎるくらいに口角を上げる。
……あ、やばい。
たった一瞬目が合っただけなのに、私は耐え切れずに目を逸らした。
ドクン、ドクン。
心臓の音が自分でもわかる。