先輩からの卒業

「先輩が辞めてから見学来なくなったってのもあるけど、古谷のこと見てたらわかったよ。誰のことが好きなのかぐらい」

「そっか」

否定も肯定もせず、ただ無意識に笑顔を作る。

「だけど、今は正直よくわかんねぇ。本当は好きなのに無理に距離取ってる感じがする」

「そんなこと……」

「ずっと見てたからわかるよ」

浪川くんがまっすぐと私を見てそう答えるから思わず言葉に詰まる。

真剣な想いを伝えてくれている彼に嘘はつけない。

「まぁ、別にどっちでもいいんだけど。それで、俺の気持ちが変わるわけでもないし」

「どっちでもって」

浪川くんのあまりにも素直すぎる言葉に思わず笑いがこぼれた。


「三宅先輩のこと諦めるつもりなら、一回俺のこと考えてみてほしい」


そう言った浪川くんの瞳は今までの中で一番熱を帯びていた。