雨降る日のキセキ
「…なんで俺?」


話を変えようと頭をフル回転させていたとき、千隼くんがようやく口を開いた。


怒ってるわけでも、不審に思ってるわけでもなさそうな口調で少しホッとする。


だけど。


「俺は別に上手くもないし甲子園目指せるような実力なんかない。どうしても甲子園に行きたいなら、他の人に頼んだ方がいい」


「え…?」


あんなに上手いのに…。


どうして千隼くんは自分を卑下するんだろう…。


「北野の誰よりも上手いじゃん…。なんでそんなこと言うの…?」


「……」


「千隼くん…」


千隼くんにもきっと何かつらい過去があるんだ。


直感だけど、そう思った。


「…ね、千隼くん。ストラックアウトやらない?どっちが多く当てれるか勝負!」


突然話を変えた私を怪訝そうに見つめてくる。


そんな視線は無視して、千隼くんをストラックアウトの前まで連れていく。


1〜9の番号が書かれた9枚のパネルに、ボールを当てれた回数を競う遊びだ。


球数は9球。


< 23 / 336 >

この作品をシェア

pagetop