雨降る日のキセキ

葛藤


翌日。


グラウンドには千隼くんの姿があった。


誰よりも早く出てきて、翔吾とキャッチボールをしている。


「千隼くん…」


ずっとずっと待ち望んでいた光景だった。


そのはずなのに…。


嬉しくない。


素直に喜べない。


千隼くんと顔を合わせるとどうしていいか分らないや…。


「望月さんが戻ってきてくれて心強いですね!」


「……そうだね」


真子ちゃんは本当に嬉しそうに千隼くんを見つめている。


でも私にはそんなふうに喜ぶことはできない。


千隼くんが突き飛ばしたから朝陽くんが轢かれた。


千隼くんのせいで翔吾は突き落とされ、私は襲われた。


千隼くんが悪いわけじゃないのは理解しているつもりだ。


でも…。
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