雨降る日のキセキ
「千紘さん…?」


「ごめん…なんでもない」


千隼くんのことが嫌い?


恨んでる?


…ううん。


そんな感情は一切ない。


だけど、心がモヤモヤしていて自分の気持ちがわからないんだ。




「集合!」


アップを終えたところで翔吾が集合をかける。


「皆気づいてると思うけど、今日から千隼が復帰する」


皆の前に並んで立つ翔吾と千隼くん。


去年は当たり前だったこの並びは、実はかけがえのないものだったんだ。


「何も言わず勝手に野球部を去って悪かった。今日から気持ち入れ直して頑張るから、あと半年、よろしくお願いします」


頭を下げる千隼くんに、大きくて温かい拍手が降り注がれる。


千隼くんは一度も私の方を見ることなく、ミーティングは終わった。
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