雨降る日のキセキ
「千紘」


後輩たちが準備をしている間、翔吾が話しかけに来た。


「…千隼から全部聞いた。お前らの過去のことも、安藤のことも」


…翔吾にも話したんだ。


千隼くんは…どんな思いで私や翔吾に過去を打ち明けたのかな。


きっと、たくさん悩んで葛藤して…苦しんでたんだよね…。


あの千隼くんが突然野球を捨てるほどの出来事だった。


だけど、時間をかけて過去と向き合って、私たちに打ち明けてくれた。


その誠意に答えなきゃいけないよね…。


わかってるんだ。


そんなことは頭ではわかってる。


でも。


「…今は千隼くんと今まで通り話せる自信がないの」


皆に迷惑をかけることになるのは分かってる。


もう少しだけ時間がほしい。


「それが普通だろ。気にすんな。俺だって、あいつのせいで怪我したのかと思うとムカつくし。まぁでも、それも含めてあいつだからさ」


翔吾はフッと笑った。
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